3年ブログ

3年間続けようと思い、現在8年目になりました。ネコ派ですが、最近ゴールデンレトリバーが可愛いくてしかたないです。

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死に向かって孤独を貫く。小説『草の花』

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福永武彦氏の『草の花』を読んだ。

だれかのブログで紹介されていて、それも半年くらい前だった気がするけれど、積読ののちやっと読み終えた。

 

孤独を貫き、死に向かって走り抜けていく恋愛小説だった。

ほんのわずかな気の迷い、ためらいが2人のその後を隔ててしまう悲しさ。そのときには信じて疑わなかった思いが、あとになって後悔として残ってしまう人生の苦しさ。

ハッピーエンドとは言い難い終わり方で、なんとも歯がゆい思いになって本を閉じた。

 

孤独を感じている人には相性が良いと思う。

読むのがたのしい内容ではない。自殺行為のような手術をうけて死亡した一人の男の、これまでの半生が残された2冊のノート。新しい人生を捨てて、過去のなかで生きようとして思い起こされた恋の時間、芸術のひととき。

恋は盲目だ。心が揺さぶられて焼き払われる激しい恋心のなかで、それでも孤独感がずっとあった男性の心境が語られている。たえず死に怯え、死を意識し、無駄だと知りながらも近づいたり離れたりを繰り返す。

 

孤独に身を浸していたくなる気持ちは、読んでいて共感するところも多かった。自分も同じようなことをしないかと不安にもなった。

 

この本から学んだり感じたりしたことがあるとしたら、それは言葉ではいえないような難しいものだと思う。

戦時中で、いつ赤紙が届くかもわからない状況のなかで、生きているこの瞬間だけは自分自身でいたい。

 

未来の苦痛を思うよりも、今の、この自然、この平和を自分のものにすることの方が大事なのではないか。千枝子が花を摘み、僕がこうして山を見ているこの時間に、戦争も、死も、神も、そんなものが僕等となんの関係があろう。今は今のように生きている。ただこの今のほかに、どんな生きかたがあるだろう。

 

他者と心を交わすことの暖かさを知らなかったのではなく、人一倍敏感でわかっていたからこそ素直になれずに孤独を守った。そんな男の心境が描かれていた。