近藤史恵の『スーツケースの半分は』を読みました。
青色のスーツケースは、はじめ憧れのニューヨークへの一人旅に使われます。その後友人たちに貸し出され、香港、アブダビ、パリへと巡っていき……。旅の主たちに幸運をもたらします。
やさしく広がっていく展開で、文章も読みやすい小説でした。1日で読めます。
ストーリーの最後の方では、この青いスーツケースの出どころが明かされます。僕もそこに行きたいなぁ。
幸せが引き寄せられていく様子も読んでいて気持ちがいいのですが、この小説で描かれるもう一つの視点は「人の見えない側面」についてです。
人には言えない見栄だったり、隠し事であったり……。みんな、何かしら抱えて生きているのですね。それが上手に描かれていて、現実でもそうなんだろうな、と思いました。
いいなと思った一文。
まるで人生は掌みたいなものだ。なにかをつかみ取るためには手の中のものを捨てなければならない。
僕はまさしく「ギュッとつかんで離せない」タイプ。よく言えば大切にしているということだし、悪く言えば現状維持ってこと。
なんでもそう。買い物でも就職でも恋愛でも。納得して決めるまでにすごい時間がかかる。しかし、決めてからはずいぶんと長持ちする。
だから、今の転職活動もずいぶんとくすぶっている。なんで?ってくらいに動かない、動けない。
それだけ手のひらにあるものを大事にしているし、環境は住めば都として馴染んでいるんだろう。でも、……というふうに悩み続けている。
幸運のスーツケースかぁ。いいな〜。
旅行はあまりしないのですが、ステキなスーツケースと巡り合ったら、それを使いたくて旅行するかもしれない。