村上春樹の『回転木馬のデッド・ヒート』を読みました。
小説ではなく、著者が実際に聞いた話が語られています。
「事実は小説より奇なり」と言いますが、まさにそんなふうに感じさせる話が8つ収録されていました。
それはメリー・ゴーランドによくにている。
それは定まった場所を定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗り換えることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。
しかしそれでも我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッド・ヒートをくりひろげているように見える。
人生は、誰をも抜かないし、誰にも抜かれる類ではない。
なのに人々は仮想の敵と戦っている。
この本には8つのエピソードが書かれています。
どれも村上氏が会った人から直接聞いた話だそうです。
でも、読んでいると短編小説を読んでいるようにしか思えませんでした。
備忘録もかねて、以下に内容を簡潔にまとめます。
レーダーホーゼン
夫へのプレゼントを買いに行った妻は、その場で離婚を決意する。
タクシーに乗った男
男性とタクシーで相乗りする。
彼は、絵画の中にいた人物にそっくりだった。
プールサイド
男は、35歳を人生の折り返し地点と定めていた。
今は亡き王女のための
彼女は、他人を傷つけることが天才的に上手かった。
嘔吐1979
男性は毎日吐き続け、原因不明なそのワケを必死に考えた。
雨宿り
彼女は無職のあいだ、5人の男と寝た。
野球場
変な出来事がしょっちゅうあると語った男性の、女性宅への覗き見体験。
ハンティング・ナイフ
あなたにちょっと見ていただきたいナイフがあるんです。
どれも変な話で不思議な内容でした。
それぞれが短いため、つい2度3度とツマミ食いするように読んでしまいます。
気軽に読みやすいことに加え、これが事実であるという点にも惹きつけられます。
この世はそこらじゅうに不思議が転がっているのかもしれませんね。