このブログを開設したのと同時期に読んでいた小説『水滸伝』。
とても印象に残っていて、再び読み始めてみた。
十二世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた。
国を、内側から壊そうとする反乱軍の物語。とても心が熱くなります。
登場人物がたくさんいるのですが、この第一巻で出てきた人で、僕が良いなと思ったのは薛永(せつえい)という人物。
薛永は薬に詳しく、剣の腕もたつ男。大道芸をやっていて、瓦を剣で切って、そのあとで薬を売る。
その見せ方が地味で、観客に薬を買ってもらうにはなかなか至らなかった。
「売る方法がまずいのだな」
「能がない。剣はいくらか遣えるが、自慢の薬を売る役には、なかなか立ってくれん」
「難しいな、生きるのは」
「まったくだ。俺の薬を試しさえしてくれたら、と思うのだが、誰に勧めても嫌がられる。なぜかな?」
剣の才能はあるものの、人を切るのは嫌いで瓦ばかりを切っている。
でも、商売目的である薬は人につけるものだし、薬を売る方法として瓦を切るのは得策ではない...。
薛永という人の「見せるときの不器用さ」がにじみ出ていて、それが僕自身と重なりました。
この薛永という人物は、のちに大活躍します。ようやく「自分の居場所」にたどり着くんですね。
人には人の適切な居場所があるのではないか、と思います。
人の生きる道、というのが『水滸伝』のテーマの一つです。
シリーズは全19巻あるので、これから一冊ごとに感想を書いていくつもり。
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