数年前に読んだけれど、再読してみた。
ちょうどコンビニのバイトを始めたところだし、と思って。
サイゼでお昼ごはんを食べたあと、ドリンクバーをお供にして読んだ。2時間もかからずに読み終わった。
まず、読者を疲れさせることなく最後まで導くことができるという、文章のちからがすごいと思った。
あと、「そういう一面あるよなぁ」と思った。社会のリアルさを痛感した。
主人公はコンビニバイトを18年間続けている36歳の女性。幼い頃から周囲に馴染めない。
死んだ小鳥がいれば親のもとへ持っていって「食べよう」と言い、クラス内で喧嘩があったときは、喧嘩をしている両者の頭をスコップでなぐって黙らせる。
それらのなにがおかしいのか、注意されてもまったくわからない。でもどうやら自分は普通じゃないらしいと感じ、余計なことは一切言わない、やらないことにして生きてきた。
バイトを始めた時に周囲は喜んでくれたから続けていて、気がついたら30代半ばになっていた。いつのまにか「いつまでバイトやってるの?」「なんで就職しないの?」と責められるようになるが、その理由がわからない。
そうやって、社会から押し付けられる普通像にもがき苦しみながら、主人公は生きていく。そういう物語。
普通とは、まるで宗教のようだと思った。
それを信仰している人が多くて、違う人がいると糾弾する。そしておかしいのは、その普通の定義も人によって違うところ。人それぞれ、自分たちが信じる普通像がある。
社会的強者の立場にいる人は、『コンビニ人間』を読んで、そんなバイトしかできない人間をあざ笑うかもしれない。
けれど、この小説が伝えているのはそこじゃない。
社会にひそんでいる「普通」という病。だれもがこの病気を抱えていて、それによって自身が苦しんだり他人を蔑んだりする。
コンビニという今ではどこにでもある空間を舞台にして、普通に苦しむとある人物の生活に密着取材したような、そんな一冊だと感じた。