外山滋比古氏の『ライフワークの思想 (ちくま文庫)』を読みました。
生きがいをつくれ、といったメッセージのある内容です。3年間で生きがいを見出したいと考えている私には、相当な読み応えがありました。
今回は、この本の紹介と考察について書いています。
ライフワークの思想 感想
まず本書のおおまかな内容を話します。ついで、どんな人に読んでほしいかを列挙。
さらに、本の4つの章のうちのメインテーマである「フィナーレの思想」について、考察を述べました。
最後に、関連書籍として『思考の整理学 (ちくま文庫)』について触れて記事を終えています。
本の概要
2009年の出版の、外山滋比古氏のエッセイ。
1978年出版の『中年閑居として…』を底本とし、これを4年後の1982年に『ライフワークの思想』と改題、再編集されたのが本書です。
元は30年以上前に書かれていますが、今でもその思想の価値は少しも色あせていません。内容は4つの章立てからなり、まとめると次のとおり。
第1章「フィナーレの思想」
普段の仕事とは別に、何か自分が打ち込める興味や趣味、ひいては生きがいをつくろうとする考え。
第2章「知的生活考」
人は己の人生のエディターとなれ、という強いメッセージ性のある内容。
第3章「島国考」
陸続きと島国での文化の違いから、それぞれの生活を考える。
第4章「教育とことば」
文化と教育の相互関係、そして心引くことばの特徴に迫っている。
エッセイなので、このように章によって話が違います。特に第3章「島国考」は他のどの章とも異なる印象でした。
こんな人に読んで欲しい
- 生きがいが欲しい人
- 仕事に支配された人生に不安を感じる人
- アイデア、発想、ことば…これらに興味を覚える人
著者は言語学者であり、ことばについて深い知見を持っています。また、「忘却」「創造」「アイデア」「セレンディピティ」といったキーワードに詳しく、以上の人たちに本書をオススメしたいです。
第1章「フィナーレの思想」紹介と考察
ではここで、4つの章のうち1つ「フィナーレの思想」を紹介し、考察していきます。
これが、ライフワークである
「画竜点睛」ということわざがあります。
竜を描き、最後にその竜に瞳を入れると、たちまちその竜が空を舞ったという話です。
人生に例えると、今までバラバラだった経験の断片がつながり合った結果、点と点が線をつくり、やがて竜となる。人生の最終局面において、瞳を入れることで完成する。
ライフワークとは、「竜を描くこと」です。また違った例えとして、本書の一部を引用します。
やがて、人生の収穫期に達したとき、離れたように見えた石と石が、おのずからつながって、“盤上ことごとく我が陣地なり”という終局を迎えることができる。これが、ライフワークである。
(中略)
ライフワークとは、それまでバラバラになっていた断片につながりを与えて、ある有機的統一にもたらしてゆくひとつの奇跡、個人の奇跡を行うことにほかならない。
(_引用:第1章「フィナーレの思想」)
外山氏は、これはあらゆる人に実現可能であると言います。
毎週末の土日、あるいは日々のプライベートな時間を使って、ライフワーク(=生きがい)にできるものを見つけよう、と。
ところで、ライフワークなどというと、どこか大きな話で掴みどころがないように感じますね。
以下で具体的な話をします。
仕事に生きる人たちへ
ご存知の通り、今は大企業であっても潰れる時代です。
仮に潰れることもなく、リストラされる心配がないとしても、やはり安心はできませんよね。今の社会は、車の排気ガス以上にストレスフルな空気で満たされていますから...。これは社会人はもちろん、学生であっても感じていると思います。
一部を除き、多くの社会人にとって、仕事とはできればしたくないものだと考えます。しないと生きていけないからやっている、というのが正直な気持ちでしょう。
仕事でツライ思いをし続けていると、しだいに生きていくこと自体が嫌になってくる人も多くいます。朝の通勤電車が人身事故で止まることは、週明けの月曜日が最も多いようですね。恐ろしい社会に私たちは生きています。
そこで、このストレスフルな社会を生き抜くためにも、このライフワークの思想がいよいよ重要になってきます。
仕事とはなるべく別な領域で、自分の興味関心のあるところで精神の充実を図っていく。これが仕事以外の収入源になったりもするし、単に収入に関する保険にとどまりません。むしろ精神的な強い味方となり、強力なバックアップをしてくれるでしょう。
また、視点を変えて、例えば現代の定年退職をしている大人たちを見てみましょう。
仕事だけを生きがいにしていた大人たち。彼らが仕事から離れるとどうなるのか…。「家にいられると困るのよねぇ」なんて言われる所以は、ここにある気がします。
生きがいをつくること
ライフワークとは、生涯に渡って自分の生きがいをつくっていく行為であり、その奇跡です。私がこうしてブログをやっているのも、まさに生きがいをつくりたいと願ってのことでした。
ここで私の言った生きがいとは、ライフワークと言い換えても良さそうです。
本書を読んだ後、なぜか自信が湧き上がってきた理由もこれで納得。まるで裏付けされたように感じて嬉しかったのです。
私は、このブログというツールを使って自分の興味を探り当て、ゆっくり育てていきたいと考えています。私のライフワークは、しっかりその第一歩を踏み出せているように感じました。
みなさんはどうでしょうか。
人によって、そんなこと考えなくても生きていて楽しいと思えたりするなら、それで十分かもしれません。
しかしながら、もしあなたに「生きがい」になるようなことが思いつかず、生きていてもつまらないとすら感じるのであれば、この本はじっくり読むに値するはずです。
生き急がず、じっくり見極めて日々を生きよう。この姿勢がライフワークを生み出します。
メモの山に埋もれている…?
さて、話は少し逸れますが、ブログについて最近2つの悩みがあります。
- ブログネタが次々に出てくる
- なのに1つ1つを掘り下げられない
同じくブログを書いている人には、「それは贅沢な悩みだ」と罵倒されるかもしれませんが、言わせてください。
私の場合、言いたいことをすぐに書き、文章にまとめるのが苦手です。時間がかかるし、逆に時間をかけて書きたいと思っています。
外山滋比古氏の有名な著書に『思考の整理学 (ちくま文庫)』があります。詳しくは下の項目「関連書籍」に書きました。この本はいかにアイデアを出し、熟成させるかが語られているのです。それを私はちょうど2年前に読んでいたのを、たった今思い出しました。
今はこうしてブログをやっていて、始めてからそろそろ1年が経ちます。ブログネタを書いたメモはどんどん溜まり、机を中心にメモがあちこちに散乱している始末。
こんなの、もったいないです。そこで、単語帳に書き出したメモをなんとなく手にとって見ていたら、ある1枚のメモを発見しました...。
(△単語帳に書き出したメモの一部)
もう一度『思考の整理学』を読み直す、というメモを書いたまま、メモの山の肥料と化していたのです。思考をまったく整理できておりません。私はバカです。しかも今見たら、「取捨選択」の字が違うし(笑)アホすぎる...
こんなバカな私ですが、メモで山を作る気はありません。畑を作り、発想や考察、やりたいことや興味関心を育てていきたい。もしかしたら、ここからライフワークの1つが生まれるかもしれないのだから。
どうにかしたいと考えるので、次の関連書籍でこれを紹介します。
関連書籍
1986年の出版からだいぶ時間が経っているものの、今でもまれに、本屋さんの目立つコーナーで見かけることもある名著がこちら。
今回紹介した『ライフワークの思想』とも重なる内容が書かれています。特に「忘却」「触媒」はキーワードとしてつながっています。
(△『思考の整理学』の一部ページ)
『思考の整理学』の中で、このページは第4章「とにかく書いてみる」の冒頭部分。他にも本に直接メモ書きをしている箇所が多くありました。
さきほど述べたように、この本にはアイデアを出すコツやそれらをまとめる方法などが書かれています。例えば、
- カードに書いてシャッフルせよ
- 書き出したら立ち止まらず、どんどん書き進めろ
といった感じ。
特にブログをやっている人にはぜひ読んでもらいたいです。熟読に値するはず。
私も再読する必要性を強く感じながら、ここで今回は終わりたいと思います。
ではまた今度。
▽今回の本
*追記
産経ニュースによる外山氏のインタビュー記事を見つけました。
知的個人主義は不毛だと言う話です。興味深かったのでリンクを貼っておきます。