2日間で読み終わりました。
重松清『流星ワゴン』。
小説を読むのは久しぶりでしたが、改めて、小説は読む価値が大いにあるものなんだと感じました。
『流星ワゴン』感想
先日のブログに書いたように、読者さんの紹介でこの本を読もうと思いました。
ただそれだけでは読むことにはならなかったかもしれません。
背中を押したのは、このあらすじ。
死んじゃってもいいかなあ、もう……。
38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。
時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――?
生きることに疲れてしまい、かといって自死する気力もなく駅前のベンチに座り込んでしまう主人公。そこから物語がはじまります。
読み終わってみて、本当に、感動しました。
目のわきが熱く、痛くなりました。
いまという時間の価値。
親の子供にむける思い。
それらは、なかなか日常の生活では伝えられないことだし、教えてもらえないことです。ただ生活の隅っこの方で、目立たないくらい小さく存在しているんですね。
だからあることにすら気がつかないし、気がついたとしても、重要視しない。でも、それこそが大事なものだったりする。
小説は、そんな日常生活からはこぼれ落ちてしまう大切ななにかを、物語を通して教えてくれるのだと思いました。
父を思い出した
読みながら思ったのは、僕自身の父親のことです。
というのは、この小説には妻や母は登場人物としては出てくるものの、完全に脇役扱いです。この話の裏テーマは、父と息子の関係性。不器用な男同士の、気持ち同士がぶつかり合う話でした。
僕の父は、昔から飛行機が好きでした。
機械いじりも好きで、子供の頃はよく自転車を分解しては組み立てていたようです。そんなこともあって、大学は防衛大に入り、飛行機のことを学んだそうです。
のちに自衛隊に所属し、政府専用機の整備士をしました。
自衛隊での人間関係は、大変だったと思います。厳しすぎる上下関係にずっとさらされていたでしょうから、それもあってなのか、人間関係においては不器用な人だというのが、僕の父に対しての印象です。
ずいぶん以前の話です。
近くの公園で、ヘリコプターか何かのラジコンを飛ばして遊びたいから、一緒にこないかと誘われたことがありました。
僕が小学生だったなら誘いに乗ったかもしれませんが、少なくとも中学生以上ではあったと思います。「いやだよ」と断りました。
いま思い出すと、一瞬ですが、どこか寂しい表情をしていた気がします。そのときは特になんとも思わなかった出来事でしたが、この小説を読んでふと思い出しました。
あれは、父なりに精一杯努力した一言だったのかもしれない、と。
といっても、いますぐどうするという考えは特にありません。それは、いま現時点での自分に触れてこないでほしいからです。何をされても、僕の人生に横槍を入れられるように感じてしまうので、連絡もとっていません。
だけれど、……。
こういうことを感じた、というのは事実です。なかったことにしたくはないので、ここに書き綴りました。
さいごに
「いままでのことを全部忘れちゃっても、あったことは事実なんだ」
そんなセリフが似合いそうな、タイムトラベル式の人生のやり直しをはかる内容でした。
よかったのは、実際にやり直すことはできないようになっている点。ファンタジーではなく、着地点はあくまで現実ベースになっていました。
だけれど、主人公の心持ちが始まったときとはガラッと変わっているのです。
とってもいい小説でした。
特に男性にオススメです。
ではまた。