3年ブログ

3年間続けようと思い、現在8年目になりました。ネコ派ですが、最近ゴールデンレトリバーが可愛いくてしかたないです。

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言い出せなかった、恋の思い出

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今週のお題「復活してほしいもの」

 

今から10年前、アルバイト先で恋をしました。

大学へ入学し、すこし落ち着いた5月から始めた塾講師のアルバイト。それが僕にとってのはじめての仕事経験で、本気で恋に落ちた最初のときでもあります。

 

その人と始めて会ったのは、初出勤の日でした。

 

今日から始まるんだ……。

 

乾いた口でツバを飲み込み、震える手でドアを開けると、その人は教室の奥の方で1人の中学生を相手にしていました。

目が合ったのは、そのときです。

 

一目惚れ、という言葉があります。デジタル大辞泉で意味を見てみましょう。

 

[名](スル)一度見ただけで好きになること。「受付嬢に一目惚れする」

一目惚れとは - コトバンク

 

一目惚れとはまさに、その人と会った瞬間にウットリすることをいいます。

ところがどこかで聞いた話によると、あれは勘違いらしいです。

 

というのも、恋に落ちるのはひと目見たその瞬間ではなく、家に帰ってからなのだそう。

ご飯を食べているとき、シャワーを浴びているとき、歯を磨いているとき。そうしたふとした時間に、彼/彼女のことを考えてしまっている。

そんなときに、人は恋に落ちるんですって。

きっと、仕事以外の時間で何度も思い出していたのでしょうね。

 

働き始めて1ヶ月ほど過ぎたある日。

「来週飲み会やるから来い」。

塾長にそう言われました。

 

僕はまだ未成年でしたので当然お酒は飲めなくて、また小心者ですから無理やり飲まされたりするんじゃないか、なんて不安にもなりました。けれど、このときすでに恋をしていました。

返事はもちろん、「行きます」。

 

飲み会当日。

僕と塾長の他に、その人も含めて3人の学生アルバイトが集まりました。合計5人です。

 

正面か隣になりたいな……。

 

居酒屋さんに入るのもこの日が始めてです。見慣れない光景に緊張しながら席につけば、その人が正面に座ったのでした。

願ったはいいものの、いざ本当に叶っては困りました。18歳、男子校出身です。視線は壁をうろつき、筆で書かれたメニューの貼り紙を見つめることに必死でした。(笑)

 

僕以外の4人はお酒が入っていくこともあり、会話もどんどん弾んでいきます。なんでもない話が続いていく途中で、とたんに塾長がトンデモナイ発言をぶち込んできました。

 

 

「ところでお前、〇〇さんに彼氏がいるのか聞かないのか?」。

 

 

んん、……え!!???

 

僕はコーラしか飲んでいません。

完全にシラフです。

でもあまりに突然だったので(たしかそれまではサッカーチームの話をしていた)、その言葉はマジで言っているのかイジっているだけなのか、とっさには判断できませんでした。

 

案の定オドオドしてしまい、会話はそれとなく流れ去っていきました。そのあとの話はもはや頭に入ってきません。

だって聞かれたとき、正面に座っていてたその人をチラッと見たら、あながち冗談ではないような表情をしていた気がしたのです。

でもこれは思い出マジックかもしれません。

いまとなっては何もわかりません。

 

そんな飲み会も、けっきょく壁に貼られたメニューをじっと見つめるだけで終わってしまいました。

方向が違ったため僕は1人自転車で帰り、またいつもの日々に戻りました。 

 

小さな個別指導塾でしたので、スタッフどうしが気兼ねなく話せる休憩場所はなく、あるとすれば唯一、駐輪場くらいでした。

タイミングが合わないとそこでバッタリとはいかず、まれに一緒になったとしても、軽くあいさつするだけに終わります。

 

連絡先を書いた紙など渡せていたら、いまさらこんなシミったれた文章を書くこともなかったでしょうに。

 

 

飲み会のあった初夏から真夏となり、夏期講習のあとには紅葉が始まり、手袋をする季節になりました。

それまでもずっと、相変わらずでした。

 

変化があったのは、年が明けてからです。あの人を見なくなりました。

 

塾長とは必要以上のやり取りはしていませんでしたし、このころにはもう本当に好きになっていましたので、気づかれまいとしてそれとなく理由を聞き出すこともできませんでした。

こうして書いている今でも、あの人がそのときバイトを辞めていたのか、はたまた単なる出勤する曜日の変更だったのかはわかりません。

僕はその後、事情があってそのアルバイトを辞めてしまったので、いずれにしても会うことは叶いませんでした。

 

とてもステキな方でした。

女性らしい特徴のある声で、髪もきれいなウエーブがかかっていたのを覚えています。高校は地域でも有名な進学校を出ていて、大学は看護系の学校だったそうです。

 

将来どんな仕事をしたいか考えたこともなかった自分とは、雰囲気を含めてまるで違って見えました。すでにキャリアの方向性を見据えている姿勢は、今でも素晴らしく思います。

僕はあの人のことが好きでした。

 

今も看護師をされていたら、きっとコロナで多忙な毎日でしょう。どうか元気でいることを願っています。

もう終わって10年たった恋愛話ですが、夢のなかであっても復活してほしいですね〜。

 

以上、今週のお題「復活してほしいもの」でした。

ではまた〜。