小説『ノルウェイの森』を読みました。
村上春樹の作品は、ほかには『ねじまき鳥クロニクル』くらいしか読んだことがありません。
あちらは2回か3回は読んでいて、他の作品はどうなんだろうと思って手を伸ばしました。
たのしい物語ではありませんでした。
哀しさを抱えたまま過ぎていく時間、出会う人たちとの関わり。
なんでこんなことになっちゃうんだろう、という出来事の連続。
人にはいえない過去。どうにもできなくなってしまった現在。
あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと――。
あたらしい僕の大学生活はこうしてはじまった。自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同じ学部の緑。
等身大の人物を登場させ、心の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。
小説って、素晴らしいものですね。
他者の死生観、心理学、生理学、占いなど。僕は人そのものに興味があります。
そこに、小説というジャンルを加えてもいいかもしれないと思いました。
というより、加えるべきだろうな。
あまりに理不尽で、でもどうしようもできない出来事があったり。
同時に2人のことを好きになってしまったときの感情とか。
そういうのって、学問はおろか、日常生活で学んだり接する機会も乏しいです。
それらは小説や映画、漫画といった、現実をベースに物語へと変換されたもののほうが、学べるんだと思います。
学ぶというより、感じ取るに近いのかな。
『ノルウェイの森』を読んで、小説をもっともっと読んでいこうと思いました。
以下、好きな文章。
「ビスケットの缶にいろんなビスケットがつまってて、好きなのとあまり好きじゃないのがあるでしょう?
それで先に好きなのどんどん食べちゃうと、あとあまりすきじゃないのばっかり残るわよね。私、辛いことがあるといつもそう思うのよ。今これをやっとくとあとになって楽になるって。人生はビスケットの缶なんだって」
なあキズキ、俺はもうお前と一緒にいた頃の俺じゃないんだよ。俺はもう二十歳になったんだよ。そして俺は生き続けるための代償をきちっと払わなきゃならないんだよ。