一條次郎『動物たちのまーまー』を読みました。
人間の姿をした動物たちをめぐる短編集です。
感想
この人の書く物語って、どこか歪んでいます。それはフランツ・カフカを思い出させるような、悪夢にうなされている感覚に似ているかも。
前作『レプリカたちの夜』がおもしろかったので読んでみましたが、こちらも同等に楽しめました。
一番おもしろかったのは「採って穫って盗りまくれ」です。これはシロクマの着ぐるみを着た探偵が、食料ほしさにトウモロコシ畑に侵入して盗みを働くという話。
一方で、その探偵のところへトウモロコシ畑を運営する人がやってきて、泥棒をつかまえてほしいというふうに仕事を依頼する。
探偵は農園のスケジュールを手に入れて躍起になるのですが、待ち伏せされていて……という具合。
わかりやすいストーリーなんだけど、描き方が独特というか。この人ならではのタッチで物語が進行していくので、ハマる人にはハマるといった印象です。僕はけっこう好き。
心理検査のはなし
他の人の小説を読んでいても思いますが、小説家って想像力がほんとうに豊かで広いですね。
このまえ心療内科で2万円もする心理検査を受けまして、先日その結果が返ってきました。
自閉スペクトラム症を測る検査で、想像力が弱いということがわかりました。
他の人がどのように感じるのか、小説を読んでいるときに登場人物がどのような人か想像することが苦手であると考えられます。
いやぁ、そうなんですよね。小説を読んでいるときなんて、登場人物のことがほんとうにわかっていません。(笑)
それなのによく読む理由は、自分がわからないことが文字できちんと説明されているという点に、驚きと感動があるからです。
すごいなぁ、言葉で説明することができるのってすごいなぁと、自分が苦手だからこそ感激するんです。感激するだけで、けっきょく読んでてもわかってないまま読み進めるのですが。(笑)
みなさんもすごいですね。きっと、小説を読んでいる人の多くは登場人物がどういう人か、文字から想像して読み進めているのでしょうね。
僕にはうまくできませんが、僕なりに楽しんでいるので良しとします。