この『水滸伝』は全19巻あり、本日15巻目を読み終えました。ほんの2時間ほど前のことです。
非常に興奮した内容だったので、その中から1人を紹介しようと思います。紹介するのは、弓の名手の花栄です。
水滸伝のあらすじ
ざっくり解説します。
『水滸伝』は歴史小説です。宋という国と、世直しをはかる梁山泊軍との決戦物語です。
三国志みたいな感じ、というと伝わりやすいかもしれません。この物語は国vs国ではなく、国vs反逆軍のストーリーなんですね。
民から不当な税をとる役人、腐敗した政治、不誠実な法律。そんな世はおかしいとして、世直しをはかる者たちが集まりました。
梁山泊軍には多くの猛者がおり、その中でも今回は「花栄」という男にスポットを当てます。今回読み終えた、15巻目のヒーローです。
弓の名手:花栄
花栄は弓の使い手でした。
しかし戦では弓の腕を披露するタイミングがなく、示したのは梁山泊軍に加わったときだけ。入山するとき、からかってきた者に見せつけるようにして、矢を岩に打ち込み、割って見せたのです。大きな岩でした。
そんな弓の名手ですが、戦場をまるごと圧倒したシーンがあります。
♢
舞台は河の近くの戦場です。梁山泊軍の本営がすぐ近くにあり、敵がもっとも兵力を注いできた激戦地でした。河で防ぎきれず、敵を陸へあげてしまい、砦も次々に破られていきます。
梁山泊軍が必死の防戦をしているときのこと。花栄は戦場を見渡せるよう、最後の砦の一番上にいました。ここが破られたら、もう終わりです。
「よし。それなら、小李広と呼ばれた私の弓を、そばでよく見ているがいい」
矢が差し出された。
見える。前線にいる小隊長。まだ、矢が届く距離ではない。それでも花栄は矢をつがえ、無造作に弓を引き絞ると、すぐに放った。狙った男の躰は、しばらく立っていて、それから棒のように倒れた。
前線が、少し下がる。洗浄全体が、しんとしていた。
間をおかずに矢をつがえ、当たるはずのない距離から狙った敵を射抜いていきます。全員、みごとに胸の真ん中を矢が貫通していきます。
砦の上にいる花栄は、全身が敵から丸見えです。かろうじて味方が1人、楯で守ってくれています。
敵の前衛が交替し、再び別の小隊が近づいてきます。敵も、今度は楯をかまえているようですが、どうでしょうか。
敵は、前衛が交替していた。楯を出し、近づいてくる。
後方の指揮官。一枚の楯。花栄は弓を引き絞った。息を吐くと同時に放つ。楯を突き抜け、指揮官は仰向けに倒れた。
二人目。憤怒が、ようやく全身から噴き出してくる。気づいた時は、十名ほど楯ごと射倒していた。
戦場がどよめきます。
威圧された敵は下がりすぎるくらい後退していきます。敵味方を含め、とんでもないものを見てしまったといったふうな、不思議な空気が流れます。
この時、花栄の前には楯を持った1人の味方がいましたが、「すげえものを見た」とつぶやいたのち、倒れて死んでしまいます。来たときにはすでに傷だらけの状態でした。
みなが、極限状態で戦っていたのです。そんな場面で放たれた、花栄の弓矢でした。
その後、梁山泊軍の別部隊が大きな街を1つ占領します。宋軍も各地に散っていて守備が手薄だったのです。これを機に、戦はギリギリのところで終結しました。
いよいよクライマックスへ
わたしが今読んでいる、北方謙三氏の『水滸伝』は、全19巻あります。上の話は15巻目の内容です。明日から16巻目に突入します。
これまでは表上の、戦場での戦いがメインでした。これからは心理戦になるようです。互いの諜報部隊が探りをいれつつ、16巻目では暗殺部隊が大きく動くようです。
花栄の紹介でも一部文章を引用しましたが、一文一文が短いため、臨場感が出ています。戦の一瞬一瞬が伝わり、心臓が高鳴ってくるほどです。
19巻目まであと4冊。すでに手元にそろっています。6月中には読み終えるでしょう!
ではでは!!