待たされるほど気分がいいこともある
近所の薬局に行った。
すでに2月。
花粉症がひどい僕は、毎年この時期から薬を飲み始める。
いまから5月下旬までは毎日薬を飲む。でないと、やってられない。
薬局の待合スペースには、僕を含めて3人いた。15分くらいで呼ばれるだろうと思っていたら、これがずいぶんと待たされる結果になった。
患者さん(お客さん)と薬剤師さんとの会話が聞こえてくる。
今朝の血圧はどうでしたか。
お薬は何時ごろ飲まれましたか。
お薬が変わったので、……。
はじめは、患者さんの耳が遠いのかと思った。でもどうやらそうではなかったらしい。薬剤師さんが、懇切丁寧に説明しているのだった。
壁を眺めていると、一角にたくさんの賞状が飾られていた。その中には、市や県からの感謝状があった。どの賞状にも、同じ個人の名前が書かれている。きっと今説明している薬剤師さんだろう、と思った。
その間にも話は続いていて、10分、20分と過ぎていく。ようやく終わって別の人が呼ばれた。さきほどと同じ薬剤師さんが説明をはじめる。やはり念入りな解説が聞こえる。最後には「まだ寒い日が続くので体調にはお気をつけて」と声をかけていた。
僕の名前が呼ばれたのは、薬局に来てから実に40分は過ぎようとしていたときだった。事前にお薬手帳を渡していたから、薬剤師さんも毎年飲んでいる薬だと知っていたはずだ。にもかかわらず、ここでも丁寧な説明をいただけた。
待たされるというのは、たいていありがたいことではない。けれど、ときには待たされるほど気分がいいこともある。
僕がみた限りでは、一緒に待っていた人もいらだつ様子もなく、ただ静かに待っていたように見えた。