趣味で写真グループに所属しています。
2年ほど前、そこでお世話になっている人とご飯に行きました。
当時、僕はたしか会社をやめる前後だった気がします。僕の25歳ほど年上の方なので、なかば人生相談のような形で話を聞いていただきました。
その方はプロの写真家の方でして、これまで会社員になったことがありません。
写真家になったのは30歳前後とおっしゃっていて、じゃあそれまで何をしていたのかと聞けば、レーサーとして自動車競技をしていたそうです。
「オレには会社員としての苦しさとかはわからないんだけどさ……」
そう前置きすると、人生は写真を撮るのと同じな気がする、と続けてくれました。
「ある道を歩いていて、パッとみたら横道があった。気になったからそっちに進んで、また歩き始めた。そうしたら、もうさっきまで歩いていた道は存在していないのと同じなんだと思う。
厳密には存在してはいるけど、もとの道でその後どんな良い光景や瞬間があったのかはわからない。横道に入ったら、もうその横道があなたのメインストリートになるってわけだ。
さっきの道を歩いていたら……なんて考えてもしかたない。写真は、いま自分が歩いている道でしか撮ることはできないんだから」
細かいところは違っていたかもしれませんが、大雑把にはこんな話だったと思います。
当時の僕も何を言ったのか定かではないのですが、気持ちが軽くなって嬉しかったことは覚えています。
何かに悩んでいたり苦しんでいるとき、心の視野が狭くなって「ここの道しかないんだ」という気がしてきますが、それは違うのです。
いまの状態は、ある一本の道に過ぎません。となりにも道はあるし、横道もたくさんあるはずです。
いま歩んでいる道がすべてではないということ。
たくさんの道があり、いつ横道に入っても良いということ。
でも横道に入ったら、さっきまでの道の先はあなたの中ではもう存在しないということ。
楽しかったことも苦しかったことも、終わったことは終わったこと。
過去の栄光にしがみついたり、過去の苦しみに浸っていてもしかたがない。
いつだって、あなたは横道に入ることができる。
だから、選んだ道を自信をもって進もうと思う。