図書館で交渉に関する書籍を借りて読んでいます。
最近読んだ『すごい交渉術』という本を読んで、特に後半にかかれている「そもそも交渉とはなにか」という話がいちばん面白かったです。
ゴールは「あなたに会って良かった」
著者の豊福さんは、保険の営業をされている方です。はじめは数字ばかりを追う営業スタイルでした。
顧客がほんとうに望んでいることを考えず、自分のため、会社のためばかりのやり方にウンザリしていたころ、本書で紹介される交渉術を知ったと語ります。
現在は独立し、会社の経営をされているそうです。
本の前半では交渉において大事な5つのステップ、後半では交渉から一歩引いたような、「そもそも交渉とは何か」といった話題へ移ります。
目からウロコのような、なるほど!っていう内容というより、どちらかというと始めからわかっていたけれど埋もれて見えなくなっていたことに気がつくような、そんな内容でした。
相手の頭のなかを覗く
本の中の後半部分。そもそも交渉とは何なのか、という話がとても印象に残りましたので、それについて触れたいと思います。
交渉とは何か。著者は、「相手がどう思うかがすべて」「自分が一番取るに足らない存在」というふうに考えます。
一般的に交渉というと、どこか自分の利益を最大化することだけにスポットライトがあたるので、多くの人がニガテ意識を持つんですよね。僕もその1人でした。
そんな僕が本書を読んでもっとも印象に残ったのが、「相手の頭のなかを覗く」というフレーズ。本の中でも何度も出てくるので、交渉の達人としても重要ワードなのだと思います。
「相手の頭のなかを覗く」とは、相手が本当に望んでいることは何なのかを知ることです。
これができずに交渉をしてしまうと、相手にとってはトンチンカンな話をされてウンザリさせてしまったり、あとになって話がこじれたりするんですね。
なぜこの言葉がもっとも印象に残ったかというと、仕事だけでなく、人と人のやり取りのほとんどに当てはまると感じたからです。
例:子供がピアノの練習をサボる
本の中で、子供がピアノの練習をしないことに苛立ちを覚える親が出てきます。
これ、読んでいて痛かったです。
親の対処の例が3つ出てきます。
- 怒鳴って叱る
- 「練習しなければオモチャを没収する」と言う
- 「練習してくれたら嬉しい」と伝える
さて、どれなら良いのでしょうか。
交渉という観点では、たとえば①怒鳴って叱るのは完全にNGとありました。
そりゃそうですよね。良好な関係が築けるわけがないですから。
(でもそうわかっておきながら怒鳴ってしまう親がいることに、子育ての難しさも感じました……^^;)
次に、②練習をしなければオモチャを没収するという例。こちらもNGとあります。
親という立場の乱用で、いわば権力を振りかざしているに等しいのが理由。会社だとこれはパワハラに該当すると書かれています。
この「親という立場の乱用」「権力の振りかざし」という単語を見て、自分自身を思い出してしまい、ちょっとツラかった。身に覚えがあるからです。
振りかざすとこうなったりするからNGなのだと、実体験から納得。
例の3つ目に、「練習してくれたら嬉しいと伝える」が挙がっていました。
これは一見OKのように感じますが……交渉としてはNGだそうです。
というのも、ピアノの練習をするのはあくまで子供なのに、議論の中心が親になっていることが間違いなんですって。
心理学をかじったりすると、よく「Iメッセージで伝えましょう」なんて言われるのですが……交渉と捉えると、これも正解とはいえないみたいです。
100%の貢献
じゃあどうしたらいいのか。
著者は、子供の頭の中を覗く努力から始めましょうといいます。それが親からみたときの子供との交渉だから。
子供が練習をしたがらない理由や、他にやりたいことがあるのか、などを聞いていくことになるでしょうね。
交渉とは何なのか。
うえで「相手がどう思うかがすべて」「自分が一番取るに足らない存在」というふうに書きましたが、これを言い換えて、100%相手に貢献することだと豊福さんは言います。
だから、まず相手の頭の中を覗いて、相手が本当に望んでいることを知る必要があるんですね。
ここで注意したいのは、相手もまたこちらの頭の中を覗こうとしているという点。
ピアノの例だとわかりやすいです。子供だって、どうして親がピアノの練習をさせたがっているのかを考えますからね。
あなたに会ってよかった
相手もこちらの頭の中を覗こうとする。それを逆手にとって、豊福さんは「こちらはバカ正直になったほうがいい」と語ります。
「実は子供が熱を出して寝込んでいて、気になってソワソワしています」とか。
ゴリ押ししてしまうクセがあるなら、「そういうクセがあるので、もし気になったらおっしゃってください」など。
先に言ってしまうことで、私はあなたに貢献したいのだと伝える。
交渉においていろんな大切なポイントが本の中で語られていますが、一言でまとめると、相手に「あなたに会ってよかった」と思ってもらうように努力すると言えそうです。
この意識がけは、とても大切だなぁと強く感じました。
さいごに
実際の営業マンがこれを読んだら、「それはわかっているけれどそうも言ってられないんだ」といった声が聞こえてきそうです。
先日、たまたま営業マンのブログを読んだとき、数字ばかりを追うのがツライと吐露されていました……。
僕は、それもあって営業職にはあまりいい印象を持っていません。もちろん営業と一言で言ってもいろいろあるでしょうけれど。(^^;)
これはおそらくですが、営業(あるいは交渉)とは、自分の利益を最大化することだという認識が広まっているからではないかと思います。
相手のことはどうでもよくて、自分とか自社の利益を最大化する。でもイチ個人としては数字なんかより、心を重視したい……。そう思っている人が多いのではないでしょうか。
この本を読んだからといって、すぐに何かが変わるのは難しいと感じます。
けれど、そもそも何が大事なのか、これは改めておさえておくことに大きな価値があると思います。
そのうえで、数字を追わないといけないとすれば、どうやって両者を満たしていけそうなのか。
営業職をやったことがない僕がいうのは間違っているのかもしれませんが、本書を読んで僕はそう思いました。