死に関する本が読みたくて、図書館でいくつか借りてきました。
受け取るとき、職員さんから「あと1冊は児童館にあります」と言われて。
どうやらこの本、子供用だったらしいです。
講演会みたいでした
副題に、中学生までに読んでおきたい哲学、とある。
開いてみると、
でも中身は大人用だよこれ。
というのは、この本はいろんな人の著書から「死」に関するテーマの話だけ切り抜いて収録されているから。
僕が昨年読んだ、河合隼雄の「心の処方箋」からもひとつ収録されていました。
多くはエッセイですが、ショート・ショートから詩、落語まで載っています。
死というヘビーなテーマですが、読んでいて特に気持ちが沈むこともないし、腹が立つこともなかったです。
まるで多数の先生方が一堂に集まった、講演会を聞きに来たような……そんな感覚。
いくつか読んでいて思ったことがあったので、ここに記しておきます。
感想
うつろうもの
名誉、富貴、情熱、すべてうつろうものである。消えていくものばかりでなりたっている人生は虚無だともいえる。
だが、虚無の世界のなかで、私は生きているということだけは実在である。銀河系のなかのただひとつのたしかな実在、これほど貴重なものがあろうか。
松田道雄「死について」
過去も未来もなく、存在するのは今この瞬間しかない_。
わかってますけれどね、だからといって、今にしか意識が向かない他の動物のように行きていくのは難しいのがニンゲンですよね……。
命の大切さ
命の「大切さ」を教えるより、命の「不思議さ」を感じさせるほうが先だ。命の不思議さとは、言うまでもなく生と死、すなわち「存在と無」の不思議である。
生きて死ぬこと、存在することしないこと、この当たり前の不思議に驚くところにしか、それは「大切にする」という感覚は出てこない。
池田晶子「無いものを教えようとしても」
子供は「なんでなんで」と知りたがります。そのとき親が煩わしいと感じてスカしたり、立場を利用して黙らせるようではいけませんね。
いっしょになってなんでだろうと頭を悩ませる余裕が必要だ、と思いました。
未遂者
大原健士郎氏の多くの未遂例の研究によれば、たいていの未遂者は「死なないでよかった」と言い、自殺企図を契機として新しい生きかたを採用するという。
しかも多くの場合、外的条件が変わったのではなくて、企図者の心の持ちかたが変わったためであるという。
神谷美恵子「自殺と人間の生きがい」
心の持ちかたとは、解釈の仕方。物事のどの側面に光を当てているのか。
そうとわかっていても、内容によってはスポットライトの土台がガチガチに錆びついて動かないこともあり、未遂は運良く土台が動かせただけなのかもしれないな。
さいごに
こんな感じで、死についていろんな角度から語られていて、1日で読み終えてしまいました。
子ども用だと思って手に取ると痛い目みます。逆に子供が読んでも理解できるんだろうか……。
あ、でも、そもそも「死」というテーマ自体が難しいのだから、これにおいては大人も子供も関係ないのかもしれない。
「死」以外にも、シリーズが全8冊あるようです。
図書館の予約本リストに入れておく。
ではまた。