人間
公園にいる。日向で読書しながら、心と身体を充電していた。
周囲にはトンボが飛び回っていて、草木が静かに揺れている。
本から目を離してぼんやりしていると、遠くにいる一匹のバッタに気がついた。
じっとしていて、そうかと思うと歩き出して見えなくなった。
降ろしていたリュックには芋虫が付いていた。
雑草をちぎってそれに乗せ、草木のある場所へ放り投げた。
バッタも芋虫も、食べては成長し、次の世代を残して消えていく。
人間も同じ生き物なのに、僕とは大きく違うなと思った。
食べることにはいい加減。
仕事について迷うばかり。
子供はつくったほうがいいのか考える。
そもそもつくれる身体なのだろうかと疑問に思ったりする。
輪廻転生がほんとうだとするならば、きっと僕はバッタや芋虫のときが多くて、ふと人間をやってみたくなってしまったんだと思った。
これは魔が差したというべきだろう。
30年生きてきて、いまのところ人間ならではの愉しみにはありつけていない。
こんなことを考えて半ば憂鬱になっていたら、スニーカーにトンボがとまった。
彼はそれに格別な意味を抱いていないだろう。
けれど、僕には接してくれたように感じて嬉しかった。
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