村上春樹『風の歌を聴け』の感想です。
同氏のデビュー作。『風の歌を聴け』は会話文が多く、1日あれば読み終わる文量でした。
1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。
この作品でデビューしたというのもあるのか、ほかの代表作、たとえば『スプートニクの恋人』『ノルウェイの森』などとはずいぶんと違う印象です。これぞ文学、という感じでしょうか(あくまで個人的感想です)。
硬いというか、しっかり作り込んだというか。一文字も無駄がない。ほかの作品にももちろん無駄はないのでしょうが、それでも少しゆとりがあるように感じていました。
夏の香りを感じたのは久し振りだった。潮の香り、遠い汽笛、女の子の肌の手ざわり、ヘヤー・リンスのレモンの匂い、夕暮れの風、淡い希望、そして夏の夢……。
しかしそれはまるでずれてしまったトレーシング・ペーパーのように、何もかもが少しずつ、しかしとり返しのつかぬくらいに昔とは違っていた。
何度も読み返したくなる文章。そういう表現がとても多かったです。
一度読んだだけではもったいないのかもしれません。僕は飽き性なので次々に手を出しますが。(^^;)
また図書館で何か借りようと思います。
ではまた。
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