憂鬱だったから、無心になって夜道を歩いた。
昼間はあまり好きじゃない。太陽は明るくて、活発な人たちの中に自分がいることがいたたまれない。
夜は好き。心が暗いときは周囲も暗い方が落ち着く。おまけに夜風には独特の匂いがする。昼間の強すぎるエネルギーが静まり返ったときの香り。穏やかになれる。
いつもの散歩コースだったけれど、今回は行ったことのないエリアまで歩き進んだ。
憂鬱なときは歩くのがいい。ただひたすらに歩く。ほんとうは走った方がいいらしいが(運動しているときに人は考え事ができないらしい)、走るエネルギーもない。
歩けば考え事はできてしまうが、それでも机に突っ伏して落ち込むよりマシだった。
遠くで赤い太陽があがった。ぼんやりしていると立て続けに現れた。花火だった。
歩くのをやめ、しばらく見つめた。黄色、オレンジ、赤。大きな丸を描いては散っていった。
心地よかった夜風も冷たく感じられ、そろそろ帰ろうと思い始めた。ずいぶん遠くまで来てしまった。気づけばお腹も空いていた。
帰り道、歩道は明るい市街地へと伸びている。
1人でいることが悲しくなってきた。だれか隣にいてくれたらいいのに。隣には誰もいなくて、ただただ1人ぼっちつらかった。
後ろのほうから聞こえる若者たちの笑い声が、悲しさを増幅させた。
なんで生きているんだろうと思うと、それは感じるために生きているんだろうって思っう。なにを? 暖かさやぬくもり、ありがたさや希望、そうした幸せを感じるため。
でも今の僕は、つらさや苦しさ、絶望ばかりを感じてしまう。
未来が先細りになって、最終的には小さなアリが指先でプチっと押しつぶされるみたいにして潰されるようなイメージを思い浮かべる。
このままじゃ生きていけない。
アルバイトでもいいじゃないか、親のスネかじってたらいいじゃないかと言う人もいるかもしれないが、そういうことじゃないんだよ。