わたしの書く書評は、ネタバレを含みません。感想といっても、わたしの感じたことを中心に書きました。
多崎つくるへ。君の個性は、表にとても現れにくいタイプのものだったんだ。
感想『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
6/19から読み始めました。
数日前に読み終え、その後は脈絡のない本を手にとっています。
#毎日新しいこと日記
— ぬこ@ブログとカメラ (@3years_book) 2018年6月25日
6/25。オイゲン・ヘリゲル述『日本の弓術』を読み始めました。ヨーロッパから来たヘリゲルが、日本の禅の思想を学んだ話です。弓を射ることと座禅を組むことは同じなのだと。
村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、昨晩読み終えました。感想はまた後日ね。 pic.twitter.com/Q7zDMqP1cW
読みたい本がすでに本棚に積読されていますよ。
次に簡単にあらすじをまとめました。それからわたし個人が感じたことを書いています。
簡単なあらすじ
多崎つくるには、それまで4人の大切な友人がいた。ただし彼が大学生になった頃、どういうわけか彼ら4人から、突如絶縁を伝えられる。それまでとても仲が良かったのに、理由もなしにいきなり...。
それから10数年。彼は駅を作るエンジニアとなった。好きな仕事につけたものの、彼の心にはまだ4人の存在が刺さっている。
あのとき何が起きたのか。調べていくと、そこには人の、誰にも言えないまま過ごしてきた、悩み苦しんだ無限の時間があることを知った。
それにあわせるように、彼の心に刺さったトゲがしだいに溶けていくのだった。
色彩がない
それは、自分が他の人とくらべて、個性がないことを意味する。何もないんだ。つくるは、そんなことをずっと心に抱いて生きています。
高校生時代、彼の仲良し5人組の中では、自分だけが名前に色を持っていませんでした。他の4人には、名前に「赤」「青」「白」「黒」がついていたのです。
色だけなら取り立てて言うこともありません。
色のみならず、多崎つくる以外の4人には、みなそれぞれ個性が備わっていました。元気いっぱいなスポーツマンだったり、場を和ますエンターテイメントだったり。
つくるには、そうした個性がなかったのでした。
物語の最後のほうで、つくるはそれを容器にたとえているシーンがあります。友人以上恋人未満の女性に対し、アプローチしたいのにできずにいる場面です。
『これという個性もなければ、鮮やかな色彩もない。こちらから差し出せるものを何ひとつ持ち合わせていない。そのことがずっと昔から僕の抱えていた問題だった。
僕はいつも自分を空っぽの容器みたいに感じてきた。入れ物としてはある程度形をなしているかもしれないけれど、その中には内容と呼べるほどのものはろくすっぽもない』
名前に色がない。たったそれだけなら笑い話で済みますが、つくるの人生にはことごとく、この「色彩を持っていない」という点が彼を何度も苦しませます。
ときどき考えることがありませんか? 「自分だけ何もないんだ」「他の人はすごいのに、自分はなんでこうなんだ」といった具合に。わたしは頻繁にそう思ってしまう人なので、ときにはひどく憂うつになり、ときにはひどく嫉妬深くなったりします。
ゆえに、このように言ったつくるに対して、エリが次のように返したシーンは、わたしにとってはとても印象的でした。彼女は仲良し5人組の1人、「黒」を持った女性です。
『もしそうだとしても、君はとても素敵な、心を惹かれる容器だよ。
自分自身が何であるかなんて、そんなこと本当には誰にもわかりはしない。そう思わない?
それなら君は、どこまでも美しいかたちの入れ物になればいいんだ。誰かが思わず中に何かを入れたくなるような、しっかり好感の持てる容器に』
入れ物になればいい。好感の持てる容器に。
とても新鮮な考え方です。
自分もつくると同じだ
わたし自身も、「自分はこういう人間です」と胸を張っていえる何かはありません。つくると同じか、あるいは彼以下だと感じています。
彼は駅を作るエンジニアになりました。とても立派です。わたしも情熱を持って仕事がしたいですが、何かに阻まれてそれが叶いません。
「写真がうまいじゃないか」ですって?
そう言ってくれる人が読者にいたのなら嬉しいです。しかし、今ならTwitterやInstagramといった、「いいねの数で評価される」という流れがあります。「嫉妬深い」と言った通り、気にしていないわけがありません。
自分には何もない。なりたい自分にもなれない。
そんな思いがちょうど今、心を満たしているところです。それは長くなりそうなのでまた今度。
そろそろまとめに入ります。
さいごに
少し話も脱線しつつ、今回は村上春樹作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の感想でした。
この本を読み終わった今、現在は『銀の匙』を読んでいます。Twitterにも書いたのですが、だいぶ以前に買っておいた本です。
最近ようやく積ん読してた本を読み進めてるけど、買っておいてよかったと思っているところ。
— ぬこ@ブログとカメラ (@3years_book) 2018年6月26日
絶対自分が好きになる本を、過去の自分からプレゼントされてるみたいに思う。 https://t.co/8p3pF9N1LS
この『銀の匙』、誰かにオススメされて読んでいるのですが、あんまり気が乗りません。途中で閉じてしまい、浮気するかもしれません。プレゼントは嬉しいですが、タイミングも重要です。
今日はこのへんで。またブログ書きます。
ではでは。