3年ブログ

3年間続けようと思い、現在7年目になりました。ネコ派ですが、最近ゴールデンレトリバーが可愛いくてしかたないです。

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お寺みたいな小説だった『アヒルと鴨のコインロッカー』

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伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』を読みました。

由緒あるこじんまりとしたお寺、みたいな……そんな物語でした。

 

感想

物語は過去と現在との2軸が交互に繰り出されて進みます。

途中で同じ人物が複数出てきて、過去と現在との間に接点が生まれ、ラストに向けて完全に重なってきます。

まるである山を東側から、そして西側から登山して、頂上で合流する、みたいな。最初はよくわからないんだけど、半分くらい過ぎたあたりから面白みが増していきました。

 

僕は、自分こそが主人公で、今こうして生活している「現在」こそが世界の真ん中だと思い込んでいた。けれど、正確には違うかもしれない。

 

この本のなかの主人公は、描かれ方としては主人公です。でも、物語のなかでは脇役でした。

私たちも、自分が自分として生きているわけなので、自分が主人公だと考えるまでもなくそう思っているでしょう。けれど実際は、自分以外は全員他人だし、他人の人生のなかでは自分は1人の登場人物でしかありません。つまり脇役です。

 

この小説を読んだら、まるでお寺で瞑想したような感覚になりました。

都会を離れた森の中にあるお寺。緑に覆われた、焦げ茶色の木材で建てられたお寺。

 

今自分は何をすべきなのか。この先どうなってしまうのか。友人や親との関係に悩んだり、仕事での責任感から逃れたい気持ち。ぜんぶ自分が出発点、まさにこの人生の主人公は私そのものだ、と言わんばかりの心情。

けれど、この世界には圧倒的に他人のほうが多いし、他人のなかの私は1人の他人です。

 

何が言いたいかというと、この世界のありようを、自分視点ではなくもっと「たくさんの人のなかの自分」というふうに、引き離して俯瞰させる。そんな小説でした。

 

面白いかどうかというような近視的な感情は持てなくて、もっと大きなスケールで「よくわからないけどすごいことだけはわかる」みたいな感覚になりました。

由緒あるお寺みたい、と表現したのはそういう意味です。

 

さいごに

この小説、ジャンルとしてはミステリーだそうです。たしかに事件はあるし、物語のはじめには謎で溢れています。

 

いろんな読み方、楽しみ方ができる1冊だと思いました。

日常から離れたい人、落ち着いたストーリーを求めている人にはオススメです。

 

 

 

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