話がおもしろい人っているじゃないですか。
僕の大学時代の友人で、今でも半年から1年に一度は会うんだけど、その人は世の中のことを、まるで虫かごの中に作らせたアリの巣でも見るかのように、少し遠くから眺めるような人なんだよね。
だから、そんな彼が話す話題とか疑問とか、聞いていてとてもおもしろく感じるのね。そのおもしろさっていうのは、「どうしてそんな発想になったのか」という点に尽きると思う。
『恋できみが死なない理由』というエッセイを読んだ。
これは詩人が書いた本で、それゆえ物事の着眼点が「え?そこ?」な話が多い。
たとえば石について、こんなことを書いている。
2秒しか生きられない生き物がいたら川が流れているということを認識することはきっとできなくて、同じように人は時が流れているということを本当の意味では認識することがきっとできなくて、もっと長い時の中で存在する石は、どんなふうに時を見ているのかとかたまに考える。
そんなこと普通は考えません。(笑)
ほかにもいろんな角度から世界を、人生を、愛を見つめたエッセイがあり、そのどれもが独特でセンスのある語りでした。
僕がこの本でいちばん印象に残った話は「ご挨拶2017」という文章だった。
初詣では1年を無事に過ごせた感謝をするものだと子供のころに教えられ、よくわからないまま形だけの感謝をしていたという。
けれど、大人になった今、体のずっと底に「生きてきた、生きている」という実感が横たわっている。生きること自体が困難で、感触のあるものだと知った。自分の人生の輪郭を知ってしまった。そんな中で見る夢は、子供のころとは大きく違う。
子供のころは、生きていることは日常的で、ある意味当たり前で特に意識することはない。だが大人になると、年はたしかに「越す」ものなのだと実感する。病気になったりお金が足りなくなったりして、生きることへの障壁を乗り越えないといけなくなっていく。そんな話でした。
わかってもらわなくてもいい、と思って言葉を書くことが好きで、10代の頃からそれを繰り返していたらいつの間にかそれは詩だと言われ、私は詩人になっていた。
そんな著者なので、ぶっちゃけ「何言ってるのかわからない」と感じてしまう文言も多かったです。そういう話はほとんどナナメ読みしてしまったのだけれど、それでも深く読めた話は印象深く感じられました。
今から図書館へ行って返却してきます。
その前に、気に入った話だけコンビニでコピーしておきたい。ノートに貼り付けて、お気に入りの写真を集めたアルバムみたいに、文章スクラップとしてまとめておこうと思う。